2018年2月5日月曜日

コーティング弦のノイズについて。




皆様こんにちは。
本日は、お客様から「コーティング弦のノイズについて」のご相談をお受けしましたので、その内容をご紹介させて頂きたいと思います。

以前にも増して、「エリクサー」を代表とするコーティング弦を利用している方が多くなり、当店でも最も多く売れる弦はエリクサーと言っても過言ではないでしょう。

コーティング弦とは、弦の表面に極薄い膜をかぶせる事で「酸化」から守り、弦の寿命を飛躍的に伸ばした弦の事ですが、その効果は素晴らしく、弦交換のサイクルを伸ばせるだけではなく、フレットの減りを抑える効果も御座います。
錆びた弦はフレットとの摩擦が大きく、極端に言えば、フレットをヤスリで擦っている感じになってしまいます。
また、地味な効果としては、弾いたあとで、手に金属臭さが残りにくいというのも女性のお客様に言われたこともあります。

そんな素晴らしいコーティング弦ですが、一つ問題もあります。

それは、「ノイズ」です。

どういう事か?
詳しくご説明します。

ギターやベースは常に「ジー」というノイズが出ていて、弦に触れるとノイズが聞こえなくなるという仕組みになっています。これを「弦アース」といいます。

その「弦アース」はあくまで「弦が金属で電気を通す」という事が前提の上で成り立っているのです。

しかし、コーティング弦には薄い膜がありますので、弦に直接触れていない事になってしまうのです。したがって、「弦アース」が取れず、「ジー」というノイズが出続けるという事になってしまいます。

ギターは1,2,3弦がプレーン弦で、コーティングではなく、別の技術を用いて酸化を防いでいるので、1,2,3弦に触れていれば「弦アース」は取れますので、そこまで気になるという方は居ないのかもしれませんが、、
ベースは1,2,3,4弦全てが巻き弦なので、4本全てがコーティングされています。
つまり、ベースはコーティング弦を使用すると「弦アース」が取れなのです。
ベーシストには大問題ですよね?

今回のご相談のお相手も「ベーシスト」でした。


とりあえず、コーティング弦の表面が本当に電気を通せないのかを検証したいと思います。写真をご覧ください。

エリクサー ノイズ アース

まずは通常のベース弦です。当然針が右いっぱいに振れて「導通アリ」を示しています。

エリクサー ノイズ

続いてエリクサーベース弦です。針が全く振れず、「導通ナシ」となっています。
コーティングというか、膜が被せてあるので当然ですよね。

ご相談のお客様も、曲間やMCの間ならボリュームを0にする事で対応していたそうですが、
曲中はずっと「ジー」という音が鳴っていて、ベースドライバーなどで歪ませるサウンドメイクをしている時には「ジー」というノイズまでブーストされてしまい、困っているとの事でした。あとはバラードなどの静か目な曲でも気になってしまうと。。。

まぁ、「コーティング弦を使わない!」と言えば一発で解決なんですが、
それは「解決」ではありませんよね。

そこで、今回いくつかの条件はあるものの、そのお客様のプレイスタイルであれば「ほぼ解決」といっても良いのでは?という方法を試してみました。

その条件とは・・・お客様が「指引き」で、「右親指をピックアップに乗せて弾く」というものです。

それでは順を追って御覧頂きましょう。

エリクサー ノイズ対策

まずは、ピックアップのカバーを外します。
フロントに親指を載せる人はフロントのカバーを。リアに載せて弾く人はリアのカバーを、時と場合によってどっちにも載せるという人は両方に施します。
今回はフロントに載せて弾くお客様だったので、フロントのカバーのみを外します。

エリクサー ノイズ対策

続いて、「銅箔テープ」を適当な幅で切ります。
「銅箔テープ」は薄くても一応金属なので、切り口で手を切ってしまう場合もありますので、怪我をしない様に気を付けて下さいね。


エリクサー ノイズ対策

適当なサイズに切り出した「銅箔テープ」をピックアップカバーに貼り付けます。
この時に、弾いている時に親指が触れるであろう部分を意識して貼り付けます。


エリクサー ノイズ対策

貼り付けた「銅箔テープ」に配線を半田付けします。
ここで要注意なのは、「時間」です。
カバーはプラスティックなので、銅箔テープに半田ごてを当てている時間が長いと、カバーが溶けます。。超々一瞬で行ってください。
もし、それが無理な時は、先に半田をしてから貼り付けると良いかもです。
ただし、位置決めは逆に難しくなるかもしれませんが・・・。


エリクサー ノイズ対策

半田づけした配線をボリュームPOTの背中などのアースポイントに接続し、
ピックアップカバーを元に戻します。
この時、ピックアップカバーとピックガード、ボディ材の隙間があまりにもタイトな場合はピックガードを少しだけ削ったり、もっと極細の配線を使ったりすれば収まると思います。そこは各楽器に合わせて対処するしかないですね。


作業は以上となりますが、仕組みをご説明しておきます。
「弦アース」が取れないのであれば、右手の親指からアースを落とせば良いという考え方です。その為にピックアップの上にアースに触れるポイントを作ったという事です。

これにより、コーティング弦でも、普通の弦でも、左手は関係なく、右手親指から安定してアースが取れる様になります。

決してこれが全ての方に対して有効で完璧な方法とは言えないのですが、
・楽器を大きく改造しないで、後戻り出来る。
・短時間で、低コスト。
・元のサウンドとほぼ変わらない事。
などのメリットがあるのでオススメです。

これで、お気に入りの「コーティング弦」をガンガン使えますよね!



ここで、別の角度からの意見として、
「そもそも入ってくるノイズを減らせば良いのでは?」
という意見もあると思います。

方法としては、キャビティー内などの「シールディング」を強化する事が挙げられると思います。具体的には、キャビティーの導電塗料を塗り直し、そこら中からアースに落としたり、銅箔テープやアルミテープを隙間なく貼り込んで、継ぎ目を半田で止めて、さらにアースに落とすとか・・・。
特にネットを見るとかなり多くの方々が行っていますね。

この方法、確かに外から入ってくるノイズをシャットアウト出来るので、
確実に「ノイズは減ります」。
しかし、極端に「ハイ落ち」もします。
要するに、ノイズは少ないけれど、高音域も一緒に削られて、ややモッサリとしたサウンドになってしまいます。

という訳で、今回はシールディングはそのままにし、人の体にきちんとアースを落とすという事に特化した方法を取った訳です。


今回、技術的な内容なので、ちょっと難しくなってしまいましたが、なるべく一般の方にも理解しやすい様な表現を心掛けたつもりです。
ただ、最もご理解頂きたいのは、
「楽器」は1本ごとに状態なども異なりますし、
「弾き手」のプレイスタイルや、好み、
「環境」がライブメインなのか、レコーディングが多いのか、
等々、様々な状況があっての事なので、楽器に関するトラブルに対しての
解決方法は一つでは無いし、逆に言えば完璧な方法も無いとも言えます。
だからこそ、お客様と直接お話させて頂きつつ、個々のプレーヤーに合わせた方法を
試行錯誤するしかないのです。
あとは、「理屈より、とにかくやってみる」これに尽きますね。
なんたって、「音」と「電気」は未だきちんと説明のつかない部分が多く、
「こうしたらこうなった」という経験を積み重ねた「結果論」である事も非常に多いので、まだまだ「自由とロマン」があるのかなぁとも個人的には思っていたりもします。


今回の処置や、通常の故障はもちろん、壊れていない楽器でも何かお困りの事があれば、
是非当店のリペアにご相談下さい。
セオリーに縛られずに、お客様と共に「答え」を見つけるリペアをご提供させて頂きます。




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